あなたのタイムラインにも、いませんか?
誰かが楽しんでいる趣味の投稿に「もっとこうした方がいいですよ」。
悩みを打ち明けた投稿に「それはあなたの考えが甘いからだ」。
まるで自分が専門家であるかのように、頼んでもいないアドバイスを上から目線で投げかけてくる人。そんなコメントに、心がモヤッとしたり、思わず反論したくなったりした経験は、誰にでもあるかもしれません。
今回は、そんなSNS上の「教えたがり」な人たちの心理状態と、彼らが置かれている状況を専門家の視点から分析します。そして、この現象から私たちが何を学び、どう賢く対処していけば良いのかを一緒に考えていきましょう。
なぜ彼らは「上から目線」でアドバイスをするのか?
彼らの行動の裏には、いくつかの共通した心理が隠されています。決して、あなたを個人的に攻撃したいわけではないケースも多いのです。
1. 強い「承認欲求」と「自己肯定感の低さ」
最も大きな原因は、「認められたい」という強い承認欲求です。自分の知識を披露し、「物知り」「すごい人」だと思われたい。他人から尊敬されることで、自分の価値を確かめたいのです。
これは、裏を返せば自己肯定感が低いことの表れでもあります。自分に自信がないため、他人より優位な立場に立つことでしか安心感を得られない。アドバイスという形で相手より上に立とうとする行為は、一種の「マウンティング」と言えるでしょう。
2. 「正義感の暴走」と「共感性の欠如」
「間違っていることは正さなければならない」「知らない人には自分が教えてあげるべきだ」という、歪んだ正義感に駆られているケースもあります。彼らの中では、それが「良いこと」だと信じ込んでいるのです。
しかし、そこには「相手が今どんな気持ちか」「本当にアドバイスを求めているか」という視点が欠けています。相手の感情を想像する共感性よりも、自分の「教えたい」「正したい」という欲求が優先されてしまっている状態です。
3. 少し知っていることを「全て」だと勘違いする「知の錯覚」
心理学には「ダニング=クルーガー効果」(Wikipedia)という有名な言葉があります。これは、能力が低い人ほど、自分の能力を過大評価する傾向があるという認知バイアスです。
例えば、ある分野について本を1冊読んだだけの人が、まるでその道の第一人者であるかのように振る舞うことがあります。彼らは、自分が知らないことの広大さを知らないため、「自分はもう十分に理解した」と錯覚してしまうのです。本当の専門家であればあるほど、知識の奥深さを知っているため、断定的な物言いを避ける傾向があります。SNSで声高にアドバイスをする人は、実は「ちょっとかじっただけ」の知識で満足しているのかもしれません。
彼らが置かれている「状況」とは?
彼らの心理だけでなく、置かれている環境も行動に影響を与えています。
- 現実世界での承認不足: 実社会で自分の知識や意見を披露する場がなかったり、話を聞いてもらえなかったりする不満を、SNSで解消しようとしている可能性があります。SNSは、手軽に「先生」や「専門家」になれる格好の舞台なのです。
- SNSの特性: 顔が見えない匿名性や、文章だけのコミュニケーションは、相手の感情を無視した一方的な発言を助長します。もし対面であれば、相手の困惑した表情を見て「言い過ぎたかな」と気づけるかもしれません。しかし、SNSではそのブレーキが効きにくくなります。
私たちはこの現象から何を学び、どう対処すべきか?
さて、ここからが本題です。彼らの心理を理解した上で、私たちはどうすれば自分の心を守り、学びにつなげることができるのでしょうか。
1. 「これは、私ではなく“あの人”の課題だ」と切り分ける
まず最も大切なのは、感情的に反応しないことです。上から目線のアドバイスは、あなたの価値を否定するものではありません。それは、アドバイスをしてきた人自身の「承認欲求」や「自己肯定感の低さ」といった“彼らの課題”の表れなのです。
「この人は、今、誰かに認めてほしくて必死なんだな」と心の中でそっと呟いてみましょう。相手の土俵に乗らず、冷静に状況を俯瞰することで、無用な心の消耗を防げます。
2. スルーする、ミュートする勇気を持つ
SNSは公共の場ですが、あなたのタイムラインはあなたのプライベートな空間です。不快なコメントに律儀に付き合う必要は全くありません。
返信をせず「スルーする」。それでも絡んでくるようなら「ミュート」や「ブロック」機能を積極的に使いましょう。これは逃げではなく、自分の心の平穏を守るための賢明な自衛策です。あなたの貴重な時間とエネルギーを、心無い言葉に費やすのはやめましょう。
3. 「自分はどうか?」を省みる「反面教師」にする
彼らの行動は、私たちにとって最高の「反面教師」になります。
「自分も、良かれと思って相手を傷つけるような言い方をしていないだろうか?」
「知識をひけらかすような話し方になっていないか?」
「相手が求めてもいないアドバイスをしていないか?」
上から目線のアドバイスにモヤッとした時こそ、自分のコミュニケーションのあり方を見つめ直すチャンスです。相手の気持ちや状況を尊重し、謙虚な姿勢で人と接することの大切さを、彼らは身をもって教えてくれているのかもしれません。
4. 情報と感情を切り分け、良い部分だけ受け取る(上級編)
これは少し高度なテクニックですが、もし心に余裕があれば試してみてください。
どんなにトゲのある言い方でも、そのアドバイスの内容自体に、ほんの少しでも参考になる部分があるかもしれません。その場合は、言い方(感情)と内容(情報)を完全に切り離し、役立つ情報だけをありがたく頂戴するという方法です。
「言い方はムカつくけど、確かにこのツールは便利そうだな。調べてみよう」
「表現は最悪だけど、この視点はなかったな。参考にしよう」
まるで、泥の中から宝石を拾い上げるような感覚です。これができれば、あなたはどんなコミュニケーションからも学びを得られる、無敵のメンタルを手に入れられるかもしれません。ただし、無理は禁物です。少しでもストレスを感じるなら、迷わずスルーしましょう。
まとめ:あなたのSNSは、あなたのための場所
SNSは、様々な価値観や知識、そして承認欲求を持った人々が交流する、いわば社会の縮図です。中には、自分の心の穴を埋めるために、他人を利用しようとする人もいます。
そんな中で大切なのは、他人の言動に振り回されず、自分の心のハンドルをしっかり握ることです。
上から目線のアドバイスに遭遇したら、まずは「ああ、この人は今、認められたいんだな」とその背景をそっと察してあげましょう。そして、自分の心を守るために賢く距離を取り、時には学びの糧として活用する。
あなたの投稿は、あなたのものです。誰かの評価を気にして楽しめなくなるなんて、もったいない。これからも、あなたらしく、自由にSNSでの発信を楽しんでくださいね。この記事が、あなたの心のモヤモヤを少しでも晴らす一助となれば幸いです。