「持ちすぎ」も「持たなさすぎ」も、もう古い? 新しい豊かさのカタチ「循環的繁栄」ってなんだろう。

私たちの周りには、モノがあふれていますね。
たくさん持つことが豊かさだと考えた時代もありました。便利な家電、新しい服、広い家…。確かに、それは一時、私たちに便利さや安心感を与えてくれたかもしれません。

でも、気づけば部屋はモノでいっぱい。地球環境への影響も気になり始めます。

そんな反省からか、今度は「厳選されたモノだけで暮らす」というミニマリズムのような考え方も広がりました。スッキリとした空間で、心穏やかに暮らす。それもまた、一つの豊かさの形ですよね。精神的な充足感を求める、素敵なライフスタイルだと思います。

ただ、この二つの豊かさの形、どちらか一方だけが正解なのでしょうか?
「たくさん持つ」ことの影には環境問題や資源の枯渇が、「厳選する」ことの影には経済の停滞や、新たな「センスの良さ」を競うような窮屈さが、見え隠れしているような気もします。

そこで今日は、これらの考え方をもう一歩進めた、新しい豊かさのキーワードをご紹介したいと思います。それが「循環的繁栄(じゅんかんてき はんえい)」という考え方です。

目次

「循環的繁栄」って、なんだろう?

なんだか少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、イメージはとてもシンプルです。

それは、モノやお金、エネルギーだけでなく、知識や文化、人とのつながりといった目に見えないものも含めて、私たちの周りをぐるぐると良い形で巡り、その過程で新しい価値や豊かさを生み出し続ける状態のこと。

まるで、森の生態系のようですね。落ち葉が土の栄養になり、新しい命を育む。そんなイメージです。

「循環的繁栄」が目指すのは、

  • 私たち一人ひとりが、心もモノも満たされること。
  • 社会全体が、より公平で公正であること。
  • そして、地球環境が健やかであること。

これらがバラバラではなく、お互いに良い影響を与え合いながら、豊かになっていく。そんな未来の姿です。
単に「環境に優しい」というだけでなく、もっと積極的で、ワクワクするような豊かさを目指しているんですね。

なぜ今、「循環的繁栄」なの?

この考え方が今、注目されているのには、いくつかの理由があります。

一つは、やはり地球環境の問題です。資源を使い捨てにするのではなく、大切に使い、再生していく「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という考え方が世界的に広がっています。これは、「循環的繁栄」のとても大切な土台になります。

また、「本当の豊かさって何だろう?」という問いも深まっています。GDPのような経済的な指標だけでは測れない、心の満足度や幸福感(ウェルビーイング)を大切にしようという動きもその一つ。

そして、「誰かの犠牲の上に成り立つ豊かさで良いのだろうか?」という倫理的な視点。自分だけでなく、他の人たち、特に弱い立場の人たちや、未来の世代、そして地球環境全体への思いやり(ケアの倫理)も、「循環的繁栄」を考える上で欠かせない要素です。

これまでの「豊かさ」のイメージを少し広げて、新しい価値観を取り入れていく。それが「循環的繁栄」の第一歩なのかもしれません。

「循環的繁栄」な暮らしって、どんな感じ?

では、具体的に「循環的繁栄」を取り入れた暮らしとは、どんなものでしょうか。
いくつかヒントになりそうなことを挙げてみますね。

  • 「量より質」を大切にする: 安くてすぐに壊れてしまうものではなく、少し高くても丈夫で長持ちし、愛着を持って使い続けられるものを選ぶ。修理しながら使う文化も素敵ですよね。職人さんの技術や、伝統的な知恵にも目が向くかもしれません。
  • 「所有」から「利用」へ: モノを「持つ」ことにこだわらず、必要な時に必要なだけ「利用する」という考え方です。シェアリングサービスやサブスクリプションなどが、もっと身近になるかもしれません。これなら、個人の負担も減らせて、資源も有効活用できます。
  • 多様な豊かさを知る: お金やモノだけでなく、豊かな時間、心地よい経験、新しい学び、人との温かいつながり、自然とのふれあい、文化的な体験…。そういった多様な価値を大切にし、バランスよく生活に取り入れること。
  • 作られる過程を想像する: 私たちが手にする商品が、どこで、誰によって、どのようにつくられているのか。その背景を知ろうとすることで、より責任のある選択ができるようになります。企業も、そうした情報を積極的に公開してくれるようになると良いですね。
  • 地域とのつながりを大切にする: 地元のお店で買い物をしたり、地域で採れたものを食べたり、近所の人と不要なものを譲り合ったり。顔の見える関係の中で、地域の資源や経済が循環していくことは、大きな安心感と豊かさにつながります。

これらは、決して難しいことばかりではありません。
「お気に入りの服を丁寧に手入れして長く着る」「図書館で本を借りる」「家庭菜園で野菜を育ててみる」「近所の人と挨拶を交わす」。そんな日常の小さな選択や行動の積み重ねが、「循環的繁栄」につながっていくのかもしれません。

これからの豊かさを、一緒に考えてみませんか?

「循環的繁栄」という考え方は、まだ新しいものかもしれません。
今までの当たり前を変えていくことには、難しさも伴うでしょう。社会の仕組みや、私たち自身の意識も、少しずつ変わっていく必要があります。

でも、気候変動や資源の問題、そしてどこか満たされない私たちの心。そういった現代の課題を乗り越えていくためには、新しい豊かさのビジョンが不可欠です。

「たくさん持つこと」で安心を得ようとした時代も、「厳選すること」で心の充足を求めた時期も、それぞれが大切な探求の過程でした。

これからは、それらを乗り越えて、自分自身の心が満たされ、周りの人々や自然とも調和しながら、共に豊かになっていく。そんな「循環的繁栄」の考え方が、私たちの暮らしの新しい羅針盤になるのではないでしょうか。

この記事を読んでくださったあなたが、日々の暮らしの中で「私にとっての豊かさって何だろう?」と、少し立ち止まって考えるきっかけになれば嬉しいです。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次