「どうせ自分の一票じゃ何も変わらない」 「誰がやっても同じでしょ」 「そもそも政治なんてよくわからないし、面倒だ」
選挙のたびに、そう感じて投票に行かない人は少なくありません。その気持ち、よくわかります。日々の忙しい生活の中で、遠い世界の話に思える政治のために時間を使うのは、確かに億劫に感じるかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか?
もし、あなたが選挙に行かないことで「損」をしているとしたら。もし、あなたの一票が、想像以上に大きな力を持っているとしたら。
この記事では、選挙や政治に無関心でいることの「本当のコスト」と、たった一票を投じることの「意外なメリット」について、専門家も納得するレベルで徹底的に解説します。
1. その一票、あなたが思うより「ずっと重い」という事実
「自分の一票は無力だ」という考えは、最も大きな誤解の一つです。過去の選挙では、わずかな票差が当落を分け、社会の方向性を決定づけた例が数多く存在します。
当落を分けた「数票」の現実
信じられないかもしれませんが、選挙の歴史を振り返ると、たった一票の重みで結果が覆った事例は枚挙にいとまがありません。
- 2018年 佐賀県有田町議会議員選挙: なんと、最下位当選ラインの候補者2人が全く同じ得票数となり、最終的に「くじ引き」で当落が決まりました。もし、あと一人でも投票していれば、くじ引きという運命に委ねられることなく、議会の構成は変わっていたのです。(Google)
- 2019年 統一地方選挙: 大阪市議会議員選挙(東成区)ではわずか4票差、京都市議会議員選挙(下京区)では6票差で勝敗が決しています。(公明党HP) あなたの家族や友人グループが投票に行くだけで、結果が変わっていたかもしれない僅差です。
国政選挙のような大きな舞台でも、数百票差の接戦は珍しくありません。2017年の衆議院議員選挙(北海道10区)では513票差(朝日新聞記事)で、議席の配分が決まりました。
「どうせ変わらない」と思っていたあなたの一票は、歴史を動かす最後の一押しになる可能性を秘めているのです。
政治家は「投票してくれる人」を見ている
さらに重要なのは、政治家や政党は、自分たちに票を入れてくれる有権者のほうを向いて政策を立案するという、至極当然の事実です。
下のグラフは、近年の国政選挙における年代別の投票率の傾向を示したものです。
【年代別投票率のイメージ】

衆議院議員総選挙における年代別投票率の推移(引用元: 総務省HP『国政選挙における年代別投票率の推移について』: https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/)
ご覧の通り、若者世代の投票率は高齢者世代に比べて低い傾向にあります。政治家が限られた資源(予算や政策)を配分する際、投票率が70%の世代と35%の世代、どちらの声に耳を傾け、どちらが喜ぶ政策を優先するでしょうか?
答えは明らかです。若者の投票率が低いままでは、子育て支援、奨学金制度の改善、非正規雇用の問題、将来の年金制度といった、若い世代や現役世代にとって死活問題であるテーマの優先順位は、どうしても後回しにされがちになります。
あなたが投票に行かないという行為は、政治家に「あなたの世代は無視しても構わない」という誤ったメッセージを送っていることと同義なのです。
2. 選挙に行かない=「現状に白紙委任状」を渡している
選挙に行かないことは、単なる「不参加」ではありません。それは、現状の政治や社会のあり方に対して「異議なし」と、事実上の白紙委任状を渡していることに他なりません。
あなたの生活は「政治」でできている
税金の額、アルバイトの最低賃金、スマートフォンの通信料金、社会保険料、将来もらえる年金の額、子どもの教育環境…。私たちの生活のあらゆる場面は、選挙で選ばれた政治家が作る法律や予算によって決められています。
- 消費税を上げるか、下げるか? → あなたの財布に直結します。
- ガソリン税を一時的に停止するか? → 車を持つ人の負担が変わります。
- 不妊治療の保険適用を拡大するか? → 子どもを望む家庭の未来を左右します。
- 再生可能エネルギーへの投資を増やすか? → 将来のエネルギー政策と電気代に関わります。
これらの決定に不満があったとしても、あなたが投票を棄権すれば、その不満は「存在しないもの」として扱われます。現状を変える唯一のチャンスを、自ら手放していることになるのです。投票しないことは、現状維持への消極的な賛成票なのです。
3. 「誰に投票すれば?」その悩み、3ステップで解決できます
「そもそも誰に、どの党に投票すればいいかわからない」という声も非常に多く聞かれます。完璧な政治家や政党など存在しない以上、迷うのは当然です。しかし、100点満点の答えを探す必要はありません。「よりマシ」な選択肢を見つけるための、簡単な3つのステップをご紹介します。
STEP 1:自分の「たった一つの関心事」を決める
まずは、あなたが今の社会で感じている不満や不安、あるいは「こうなったら良いな」と思うことを、たった一つだけでいいので考えてみてください。
- 「毎月の給料が手取りでもう少し増えてほしい」
- 「子育てや教育にもっとお金を使える社会になってほしい」
- 「将来、本当に年金がもらえるのか不安だ」
- 「気候変動が心配。もっと環境に配慮した社会に」
何でも構いません。この「自分ごと」のテーマが、あなたの投票の羅針盤になります。
STEP 2:候補者・政党の「答え」を調べる
次に、あなたの関心事に対して、各候補者や政党がどう答えているかを調べます。難しく考える必要はありません。今は便利なツールがたくさんあります。
- 選挙公報: 各家庭に配布されるほか、自治体のウェブサイトでもPDFで公開されています。候補者の最も基本的な考えがまとまっています。
- 候補者や政党のウェブサイト・SNS: あなたの関心事をキーワードにして、ウェブサイト内を検索してみましょう。(例:「子育て支援」「賃上げ」など)
- ニュースサイトや比較サイト: 「〇〇選挙 争点 比較」などと検索すれば、各党の政策を横並びで比較・解説した記事が見つかります。「選挙ドットコム」などの専門サイトも非常に有用です。
STEP 3:「よりマシ」な選択肢に投じる
全ての政策に100%賛成できる候補者や政党は、まず見つからないでしょう。それで良いのです。STEP1で決めたあなたの関心事に対して、「一番共感できる」「実現してくれそう」「少なくとも反対のことは言っていない」といった基準で、「よりマシ」だと思える選択肢に一票を投じてみてください。
もしどうしても選べなければ、「支持したい候補者はいない」という意思を示すために白紙で投票する「白票」という選択肢もあります。しかし、それは棄権とは全く意味が異なります。投票所に足を運んだという事実は、あなたの政治への関心の証としてカウントされるのです。
未来は、投票用紙の先にしかない
選挙は、数年に一度だけ与えられる、社会のルールメーカーを選ぶための最も強力なツールです。あなたの一票は、決して無力でも無意味でもありません。
それは、未来の自分の給料、家族の暮らし、そしてこの国の形を決めるための、具体的で現実的な一票です。
「どうせ変わらない」と諦めて現状を受け入れるのか。 それとも、「よりマシな未来」のために一票を投じるのか。
次の選挙の日、ぜひ投票所に足を運んでみてください。あなたが投じるその一票が、社会を動かす確かな力になることを、この記事が少しでも伝えられたなら幸いです。