個性を活かす!仕事の組み方

前回は、個性の各側面に「良し悪し」はなく、それぞれに価値と活かし方がある、というお話をさせていただきました。

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しかし、現実の社会では、おっしゃる通り「この個性(性格)だから、この仕事に向いている/向いていない」という一種の「適性論」が根強く存在します。

それは時に、個人の可能性を狭め、まるで自分が「不適合」であるかのような息苦しさを感じさせることさえあります。一つの個性しか持ち得ない私たちが、その風潮とどう向き合えばよいのか。これは非常に重要で、本質的な問いです。

ここでは、その風潮に飲み込まれず、自分らしくキャリアを切り拓くための4つの向き合い方をご紹介します。

目次

1. 「向き不向き」の解像度を上げる:「適性」ではなく「現時点での相性」と捉える

まず、社会が使う「向き不向き」という言葉を、鵜呑みにしないことが重要です。その言葉は、多くの場合、非常に粗い解像度で語られています。

  • 静的な「適性」観からの脱却: 「あなたは〇〇な性格だから、この仕事に『向いている』」という見方は、個性も仕事も固定的で変わらないもの、という前提に立っています。しかし、人は経験を通じて成長し、変化する存在です。また、仕事の内容や求められる役割も、時代や環境によって変化します。今の「不向き」が、5年後には「得意」に変わっている可能性は十分にあります。
  • 「相性」と「学習可能性」で考える: 「向いていない」のではなく、「現時点では、その仕事のやり方と自分の特性との相性があまり良くない」あるいは「その仕事に必要なスキルをまだ学習していない」と捉え直してみましょう。これは、未来を閉ざす「不適合」の烙印ではなく、成長や工夫の余地を示す「現在地」に過ぎません。

2. 自分と仕事を「要素分解」してマッチングさせる

「自分は内向的だから、営業職は無理だ」と考えるのは、あまりにも大雑把な自己分析です。自分という個性も、仕事という役割も、もっと細かく「要素分解」して考えてみましょう。

例:「内向的な人」と「営業職」

「内向性」の要素分解:

  • △ 大勢の前で話すのは苦手
  • △ 初対面の人と雑談で盛り上がるのは苦手
  • ◎ 一対一で、相手の話を深く聞くのは得意
  • ◎ データや資料を元に、論理的な提案を組み立てるのは得意
  • ◎ 既存の顧客と長期的な信頼関係を築くのは得意

「営業職」の要素分解:

  • 新規の飛び込み営業
  • 大規模なプレゼンテーション
  • 顧客へのヒアリングと課題発見
  • 提案資料の作成
  • 既存顧客へのフォローアップ

こうして分解すると、「内向的」という一つの個性が、営業職の中の特定のタスク(太字部分)においては、むしろ強力な武器になることが見えてきます。全ての要素が完璧に「向いている」人など存在しません。自分の得意な要素と、仕事に求められる要素が重なる部分を見つけ、そこを自分の「主戦場」にすればよいのです。

3. 「弱み」を「工夫のしどころ」と捉え、戦略を立てる

要素分解した結果、どうしても苦手なタスク(弱み)が出てくるでしょう。ここで「だから自分はダメだ」と考えるのではなく、「どうすればその部分を補えるか?」という戦略(ストラテジー)を考えるのが、賢明な向き合い方です。

  • テクノロジーで補う: 事務作業やスケジュール管理が苦手なら、タスク管理アプリや自動化ツールを駆使する。
  • チームで補う: プレゼンは苦手だが、資料作りは得意なら、同僚と役割分担する。チームで成果を出す視点に切り替えれば、自分の「弱み」は、他者の「強み」を活かす機会にさえなります。
  • やり方を変える: 飛び込み営業が苦手なら、質の高い情報発信(ブログやSNS)を通して、顧客側から問い合わせが来る「インバウンド型」のスタイルを確立する。

「弱み」は、克服すべき欠点ではなく、あなただけのユニークな「攻略法」を生み出すための出発点なのです。

4. キャリアを「点」ではなく「線」と「面」で捉える

一つの仕事や職位が、あなたのキャリアの全てではありません。今は「不向き」と感じる仕事で苦労した経験が、未来のあなたにとって、かけがえのない財産になることがあります。

  • 経験の転移: 例えば、苦手なクレーム対応の仕事で培った忍耐力や傾聴力は、将来マネージャーになった時に、部下の悩みに寄り添う力として活きるかもしれません。
  • キャリアの偶有性(プランド・ハップンスタンス): 心理学者クランボルツが提唱した理論で、「キャリアの8割は予期しない出来事によって形成される」という考え方です。一見、「不向き」で失敗だったと思える経験さえも、次に繋がる偶然のチャンスを呼び込むことがあります。

目の前の一つの仕事への「向き不向き」に一喜一憂するのではなく、長い目で見て、全ての経験が自分のキャリアという物語を豊かにしていく、というしなやかな視点を持ちましょう。

結論として、私たちが向き合うべきは、社会が貼る「向き不向き」のレッテルではありません。向き合うべきは、自分自身の個性そのものです。

自分の個性を深く理解し、要素分解し、それを武器にする戦略を立てる。そして、どんな経験も未来の糧になると信じて、しなやかにキャリアを歩んでいく。

その主体的な姿勢こそが、画一的な「向き不向き」論という風潮に対する、最もパワフルで、最もあなたらしい「向き合い方」なのです。個性はあなたを縛る「制約」ではなく、あなただけの人生を航海するための、ユニークな「羅針盤」なのですから。

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