久しぶりにディズニーランドに行ってきました!
突然ですが、皆さんはディズニーランドに何度も足を運びたくなるのはなぜだと思いますか?「アトラクションが楽しいから」「キャラクターが好きだから」――もちろん、それも大きな理由でしょう。しかし、まちづくりの専門家である私の目には、ディズニーランドは単なるテーマパークではなく、「緻密に計算され尽くした、理想的なまち」そのものに見えるのです。
実は、あの「また来たい!」と思わせる魔法には、私たちのまちづくりに活かせるヒントがたくさん隠されています。今回は、あなたのまちも「もっと愛される場所」になるための秘訣を、ディズニーランドから学んでいきましょう。
学びのポイント1:徹底的に作り込まれた「世界観」
ディズニーランドを歩いていると、エリアごとに風景がガラリと変わることに気づきますよね。未来都市の「トゥモローランド」、おとぎ話の世界「ファンタジーランド」、開拓時代の西部「ウエスタンランド」。すごいのは、建物や音楽だけでなく、キャストの衣装、ゴミ箱のデザイン、植えられている植物に至るまで、すべてがそのエリアの「テーマ」に沿って統一されていることです。
そして、ゲストに「夢」を見せ続けるため、舞台裏であるバックステージは絶対に見せないという徹底ぶり。この「世界観へのこだわり」こそ、まちづくりが学ぶべき最初のポイントです。
【まちづくりへの応用】
あなたのまちの「テーマ」は何でしょうか?それは、歴史的な街並みかもしれませんし、豊かな自然、あるいは特定の産業や文化かもしれません。
- 「らしさ」を定義する: まずは、自分たちのまちが持つ独自の魅力、つまり「らしさ」とは何かを住民みんなで考え、共有することが大切です。
- コンセプトをまち全体で守り育てる: その「らしさ」をまちのコンセプトとして、景観条例や建物のデザインガイドラインに反映させたり、まちのイベントを企画したりします。例えば、「歴史のまち」なら電線を地中化して景観を守る、「アートのまち」なら街角にパブリックアートを設置するなど、一貫した取り組みがまちの個性を際立たせ、魅力を深めていくのです。
学びのポイント2:人の「体験」をデザインする緻密な計画
ディズニーランドの設計は、ただアトラクションを配置しているわけではありません。実は、ゲストの「体験」が最高のものになるよう、人の流れや視線が巧みにコントロールされています。
例えば、パークの中心にシンデレラ城を置く「ハブ&スポーク」という構造。これにより、ゲストはどこにいても自分の位置を把握しやすく、迷わず次の目的地へ向かえます。また、道の幅を微妙に変えたり、カーブをつけたりすることで、次に現れる景色へのワクワク感を高めています。遠くの建物を実際よりさらに遠く、雄大に見せる「強制的遠近法」という建築テクニックも有名ですね。
これらはすべて、人々が歩くこと自体を楽しく、快適にするための工夫なのです。
【まちづくりへの応用】
私たちのまちでも、「歩いて楽しい」と感じる空間をデザインすることが重要です。
- 歩行者中心の道づくり: 車優先ではなく、人が歩きやすい、つい寄り道したくなるような道を目指します。ベンチを置いたり、街路樹を植えたり、ショーウィンドウを魅力的にしたりと、できることはたくさんあります。
- ランドマークを活かす: まちのシンボル(お城、タワー、特徴的な建物など)が見えるビュースポットを作り、そこへ人を誘導するような動線を設計することで、まち全体ににぎわいを生み出せます。
- 「滞在したくなる」公共空間: 公園や広場を、ただの空き地ではなく、イベントが開かれたり、人々が休憩したり、交流したりする「居場所」としてデザインし直すことも、まちの価値を高めます。
学びのポイント3:「人」こそが主役のおもてなし
ディズニーランドの最後の、そして最大の魔法。それは「キャスト」と呼ばれる従業員の存在です。彼らは単なるスタッフではありません。訪れるすべての人に最高の体験をしてもらおうというホスピタリティ(おもてなしの心)に溢れています。
道に迷っていれば親切に声をかけ、誕生日シールを貼っていれば「おめでとう!」と祝福してくれる。清掃担当の「カストーディアル」でさえ、ただ掃除をするだけでなく、水で地面に絵を描いてゲストを楽しませてくれます。
どんなに素晴らしい施設(ハード)があっても、そこで働く「人」(ソフト)の心が伴わなければ、本当の意味で愛される場所にはなれません。
【まちづくりへの応用】
まちづくりというと、道路や建物を新しくすること(ハード整備)を思い浮かべがちですが、本当に大切なのは「そこに住む人、働く人の魅力」です。
- 住民がまちの主役: 地域の商店主が笑顔で挨拶を交わしたり、住民がボランティアで観光案内をしたり、子どもたちのためにイベントを企画したり。そんな温かい人のつながりこそが、まちの最高の魅力になります。
- 「おもてなし」の心を育む: 「このまちの人が好きだから、また来たい」。そう思ってもらえるようなコミュニティを育むことが、持続可能なまちづくりにつながります。あいさつ運動のような小さなことからでも始められるのです。
まとめ:あなたのまちも「夢の国」になれる
ディズニーランドが私たちを魅了し続ける理由は、
- 明確なテーマ(世界観)があること
- 人の体験が緻密にデザインされていること
- 「人」のおもてなしの心が溢れていること
この3つの要素が、ハード(施設)とソフト(人)の両面で完璧に融合しているからです。
これは、そのまま私たちのまちづくりに置き換えることができます。自分たちのまちの魅力を再発見し、それを一貫したテーマとして共有する。そして、そこに住む人も訪れる人も、誰もが気持ちよく過ごせるように空間と人の心をデザインしていく。
少し視点を変えて、自分のまちを歩いてみてください。きっと、ディズニーランドにも負けない「わがまちの魅力」が見つかるはずです。すべてのまちには、そこに暮らす人にとっての「特別な場所=夢の国」になる可能性が秘められているのですから。