なぜ私たちは物語を読むのか?小説が人生にもたらす、すごい効能5選

「最近、本を読んでいますか?」

動画配信サービス、SNS、ウェブトゥーン…。私たちの周りには、手軽で刺激的なエンターテイメントが溢れています。そんな時代に、わざわざ時間と集中力を使って「小説を読む」なんて、ちょっと時代遅れ?非効率?

そう思っている方も、少なくないかもしれません。

しかし、一見すると「ただの暇つぶし」に見える小説読書には、私たちの人生を根底から豊かにする、驚くべき力が秘められています。

今回は、「なぜ私たちは小説を読むのか?」という問いに、専門的な知見も交えながら、分かりやすくお答えします。この記事を読み終える頃には、きっと本屋さんへ走り出したくなっているはずです。

効能1:他人の靴を履いて歩く。「共感力」のトレーニングジム

私たちは、自分の人生しか生きることができません。しかし小説は、私たちを全く違う人生へと誘ってくれます。性別も、年齢も、国籍も、時代も異なる登場人物の「心の中」に入り込み、その喜びや悲しみ、葛藤をまるで自分のことのように追体験させてくれるのです。

これは、単なる感情移入ではありません。実は、心理学で「心の理論(Theory of Mind)(Wikipedia) 」と呼ばれる、他者の意図や感情を推測する能力を鍛える、最高のトレーニングになっています。(参考: 読書は大人の脳も活性化させる!, 定年後研究所)

ある研究では、文学的な小説を読むグループは、そうでないグループに比べて、他者の感情を読み取るテストの成績が向上したという結果も出ています。

  • 日常での効果:
    • 友人がなぜあんな発言をしたのか、想像できるようになった。
    • 職場での意見の対立を、相手の立場から理解しようと試みるようになった。

小説は、私たちに多様な視点を与え、人間関係をより円滑にするための「心のトレーニングジム」と言えるでしょう。

効能2:脳をフル回転させる「フライトシミュレーター」

パイロットが訓練でフライトシミュレーターを使うように、私たちは小説を通して「人生のシミュレーション」を行っています。

小説を読むとき、私たちの脳はただ文字を追っているわけではありません。文章から情景を思い浮かべ、音や匂い、手触りまでも想像し、物語の世界を脳内に再構築しています。これは脳にとって非常に高度な活動です。

特に、登場人物が困難な状況に直面したとき、私たちは無意識に「自分ならどうするだろう?」と考え、様々な可能性をシミュレートします。

ミステリー小説で犯人を推理したり、冒険小説で主人公と一緒に危機を乗り越えたり…。この「もしも」の体験の積み重ねが、現実世界で私たちが複雑な問題を解決し、未来を予測する力を養ってくれるのです。

効能3:思考の解像度を上げる「言葉のシャワー」

小説は、選び抜かれた言葉で紡がれた芸術です。優れた作家の文章に触れることは、質の高い「言葉のシャワー」を浴びるようなもの。

  • 普段の会話では使わない豊かな語彙
  • 物事の本質を射抜く、鮮やかな比喩表現
  • 読者を引き込む、計算された文章のリズム

これらに日常的に触れることで、私たちの語彙力や表現力は自然と磨かれていきます。

しかし、その効果は単に「言葉をたくさん知っている」ことにとどまりません。言葉は、思考のツールです。使える言葉が増えるということは、物事をより細かく、深く、多角的に考えることができるようになるということ。思考の解像度が上がるのです。

これは心理学でいう「結晶性知能」(経験や学習によって獲得される知能)(Wikipedia) の向上に直結します。自分の感情や考えを、より的確な言葉で表現できるようになったり、相手の話をより深く理解できるようになったりするでしょう。

効能4:白黒つけない世界を生き抜く「知的持久力」

SNSでは「はい」か「いいえ」か、「好き」か「嫌い」か、すぐに答えを求められがちです。しかし、現実の世界はそんなに単純ではありませんよね。

優れた小説、特に純文学と呼ばれる作品は、私たちに簡単な答えを与えてはくれません。

  • なぜ主人公は、あんな不可解な行動を取ったのか?
  • この物語が本当に伝えたかったことは何なのか?
  • 開かれた結末(オープンエンディング)の、その先をどう解釈するか?

こうした「曖昧さ」の中で、私たちは立ち止まり、考え、自分なりの意味を見出そうとします。この「分からない状態に耐える力」は、「曖昧耐性(Ambiguity Tolerance)(Wikipedia) 」と呼ばれる、現代を生きる上で非常に重要な能力です。

すぐに答えの出ない複雑な問題と向き合い続ける「知的持久力」は、小説を読むという、ある意味で非効率な行為によってこそ、鍛えられるのです。

効能5:自分自身と向き合う「内省の鏡」

読書は、本質的に孤独な営みです。しかし、その静かな時間こそが、自分自身と深く対話するための、かけがえのない機会となります。

物語の中の登場人物の生き様に、私たちは自分の過去を重ね、現在の悩みを投影し、未来への希望を見出します。「自分とは何者か?」「何を大切にして生きていきたいのか?」—。小説は、そうした根源的な問いを私たちに投げかける「鏡」の役割を果たしてくれるのです。

他人の人生の物語を通して、私たちは初めて客観的に自分自身の人生を眺めることができるのかもしれません。

まとめ:読書は、人生を豊かにする最高の「自己投資」

小説を読むことは、決して単なる暇つぶしや娯楽ではありません。

  1. 共感力を育む「トレーニングジム」
  2. 問題解決能力を養う「フライトシミュレーター」
  3. 知性を磨く「言葉のシャワー」
  4. 複雑な世界を生きるための「知的持久力」
  5. 自己を深く見つめる「内省の鏡」

これら全てを同時に体験できる、極めて高度な知的活動です。

忙しい毎日の中で、少しだけスマホを置いて、一冊の本を手に取ってみませんか?
ページをめくるごとに、あなたの内なる世界は確実に広がり、深まっていくはずです。

さあ、あなたも「自分を変える一冊」を探す旅に出かけてみましょう。本屋さんは、その入り口です。

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