先日、Amazon創業者ジェフ・ベゾス氏の超豪華な結婚式が、世界中で大きな話題となりました。しかしその反応は、賞賛一色ではありませんでした。「やりすぎだ」「お金の使い方が古い」といった批判の声も数多く上がったのです。
なぜ、彼の成功の証は「かっこいい」と見なされなかったのでしょうか?
その背景には、私たちがお金に対して抱く価値観の、大きな地殻変動があります。
この記事では、この問題を解き明かすフレームワーク「富の4象限」をご紹介します。これを使えば、ベゾス氏の件はもちろん、歴史上の偉人から私たち自身のことまで、すべてのお金の使い方をスッキリと整理し、「真にかっこいい使い方」の本質を理解できるはずです。
専門家が導き出した究極のフレームワーク「富の4象限」
お金の使い方は、突き詰めると2つの軸で分類できます。
- 時間軸:そのお金は「今」のためか?「未来」のためか?
- 対象軸:そのお金は「自分(や身内)」のためか?「社会(や他者)」のためか?
この2つの軸を組み合わせると、下図のような4つの象限(MECE:漏れなくダブりなく)が生まれます。
① 現在 × 自分「快楽消費」
② 現在 × 社会「共感投資」
③ 未来 × 自分「自己投資」
④ 未来 × 社会「レガシー投資」
すべてのお金の使い方は、この4つのどれかに分類できます。そして「かっこいい」の秘密は、このバランスにあるのです。一つずつ見ていきましょう。
第1象限:現在 × 自分「快楽消費」
これは、「今、自分のため」に使うお金です。美味しい食事、楽しい旅行、好きなファッション。私たちの生活を彩り、働くモチベーションにもなる大切な消費活動です。
- 例: 日々の食事、趣味、エンターテイメント
- 極端な例: ジェフ・ベゾス氏の今回の豪華パーティー
課題: この象限に偏りすぎると、「自己満足」「見せびらかし」と見なされ、現代の価値観の中では反感を生みやすくなります。ベゾス氏への批判は、まさにこの象限に極端に振り切れていると多くの人が感じたからに他なりません。
第2象限:現在 × 社会「共感投資」
これは、「今、社会や他者のため」に使うお金です。キーワードは「応援」。見返りを直接求めるのではなく、その活動や人物、理念に共感して投じるお金です。
- 例:
- キアヌ・リーブス:映画スタッフへの利益分配。仲間を大切にする姿勢への「共感」が集まる。
- 推し活:好きなアーティストやクリエイターを支え、共に今を盛り上げる。
- エシカル消費:環境や労働者に配慮した製品を選び、その企業の姿勢を「応援」する。
- クラウドファンディング:個人や団体の挑戦を「応援」する。
特徴: この使い方は、人々の心を動かし、「信頼」や「繋がり」というお金では買えない資産(=共感資本)を築きます。新しい時代において、最も重要視されるお金の使い方の一つです。
第3象限:未来 × 自分「自己投資」
これは、「未来の自分のため」に使うお金です。将来の可能性を広げ、豊かにするための賢明な使い方と言えます。
- 例: スキルアップのための学習、健康のためのジム通い、将来のための資産形成(NISAやiDeCoなど)
特徴: 長期的な視点に立った合理的な判断ですが、この象限だけでは社会との繋がりが生まれにくい側面もあります。
第4象限:未来 × 社会「レガシー投資」
4つの中で最もスケールが大きく、究極の「かっこいい」お金の使い方と言えるのが、この「未来の社会や人類のため」に使うお金です。自分の死後も永続的に価値を生み出し続ける、「遺産(レガシー)」を残すための投資です。
- 例:
- アンドリュー・カーネギー:全米に2,500もの公共図書館を建設し、後世に「知のインフラ」を残した。
- ビル・ゲイツ財団:貧困や病気の根絶という、人類規模の課題解決に挑む。
- イーロン・マスク:宇宙開発(スペースX)で、人類の未来の可能性を切り拓く。
- パタゴニア創業者:会社の利益のすべてが地球環境のために使われる仕組みを構築した。
特徴: 自己の成功を人類全体の進歩に繋げる行為であり、時代を超えて最高のリスペクトを集めます。
【結論】ベゾス問題から学ぶ、私たちの「富のポートフォリオ」
「富の4象限」で改めて見ると、ベゾス氏のパーティーがなぜ批判されたのかは一目瞭然です。彼の行為が第1象限「快楽消費」に極端に偏って見え、第2象限「共感」や第4象限「未来への貢献」という視点が感じられなかったからです。(もちろん、彼も別で巨額の環境基金を設立するなど第4象限の活動をしていますが、今回の見せ方はそれを上回るインパクトを与えてしまいました。)
では、私たちはどうすればいいのでしょうか?
大富豪でなくても、この「富の4象限」は誰にでも応用できます。重要なのは、4つの象限のバランスを意識することです。
あなたのお財布や銀行口座を、一つの「ポートフォリオ(資産の組み合わせ)」だと考えてみてください。
- (①快楽消費)で日々の活力を得ることは大切です。
- でも、その一部を(③自己投資)に回して、未来の自分を育ててみませんか?
- そして、ほんの少しでもいいので(②共感投資)に振り分けてみませんか?好きな作家の本を買う、応援したいお店で食事をする、小さな寄付をする。それだけで、あなたのお金は「共感」という温かい価値を持ち始めます。
あなたの一杯のコーヒーが、フェアトレードのものを選ぶだけで「②共感投資」に変わるように。
あなたの一票が政治を変えるように、あなたの一円一円が、未来の社会と文化を形作っています。
さあ、あなたのお金は、どの未来への「一票」にしますか?
まずは自分のお金の使い方を、この4象限で一度見つめ直すことから、新しい時代の「かっこいいお金の流儀」は始まるのかもしれません。