昇進したのに、なんかうまくいかない。それ、あなたのせいじゃないかも

突然ですが、こんな経験ありませんか。

現場では「あいつに任せれば安心」と言われるくらいバリバリやってきた。その実績が認められて、晴れて昇進。……したはずなのに、なぜか前より手応えがない。忙しいだけで、何を成し遂げたのか自分でもよく分からない。

あるいは、まわりでこんな人を見たことがあるかもしれません。「あんなに優秀だったのに、管理職になった途端パッとしなくなったね」。

今日はその「なぜ?」の話をします。

先に結論を言ってしまうと——それ、あなた(やその人)の能力が落ちたわけじゃありません。 昇進した瞬間に、仕事の中身そのものがこっそり別物にすり替わっているんです。ルールが変わったのに、誰も教えてくれない。だからつまずく。それだけの話なんですね。


目次

たった一行で言うと、こういうこと

昇進って、「責任と給料が増えるだけ」だと思われがちです。でも本質はもっとシンプルで、もっと残酷です。

昇進=「自分で成果を出す人」から「他人を通じて成果を出す人」への転職。

そう、ほぼ転職です。同じ会社、同じビルの同じ階にいても、やる仕事は別物。しかも、いちばんやっかいなのがこれ。

あなたを昇進させた“強み”が、次のステージでは“足かせ”になる。

「自分でやれば速いし確実」——その武器であなたは認められた。でも管理職になると、それがチームを伸ばさない最大の原因になる。皮肉ですよね。でも、ここに気づけるかどうかが分かれ道なんです。

では、具体的に何が変わるのか。ごちゃごちゃ語ると混乱するので、4つだけに絞ります。


① 「自分の手柄」を、そっと手放す

上に行くほど、自分が書いた資料も、自分が取った契約も、だんだん無くなっていきます。

これ、地味にキツいんですよ。「今日、自分、何やったんだっけ?」が、手に取って分からなくなる。

でも、ここが第一関門。昇進後のあなたの成果は、もう「自分が出したもの」じゃない。チームが、組織が、仕組みが生み出すものに変わります。

だから必要になるのが、この3つ。

  • 任せる。 「自分がやった方が速い」と思った、まさにその瞬間が手放すサインです。あなた一人が動いて出せる成果には上限がある。でも人を動かせば、上限はなくなる。
  • 育てる。 「自分にしかできない仕事」は、かっこよく聞こえて、実はリスク。しかもあなたが次に上がれない理由になります。自分がいなくても回るチームを作った人だけが、次へ行ける。
  • 仕組みにする。 同じトラブルが起きるたびに自分が火消しに走るのをやめる。「二度と起きない仕組み」を作る。ヒーローより、ヒーローがいらない設計のほうが偉いんです。

ちょっとさみしいですが、こう考えると楽になります。あなたが去ったあとに残るのは、個人の手柄じゃない。育てた人と、作った仕組みと、残した空気感です。それがいちばんかっこいいレガシーですよ。


② 「正解探し」を、やめる

下のポジションの仕事って、わりと「正解」があるんです。やり方を覚えて、速く正確にやれば褒められる。

ところが上に行くと、世界が変わります。正解はない。情報は足りない。どっちを選んでも文句は出る。しかも結果が出るのは数年先。……ハードモードですよね。

ここで求められるのは「知ってること」じゃなくて「決めること」。コツは3つ。

  • 70%で決める。 100%情報がそろうのを待ってたら、チャンスは逃げます。足りないまま腹をくくって決めて、決めたらやり切る。上の人ほど「決めない」が一番のリスクなんです。
  • 遠くを見る。 今週 → 四半期 → 数年 → 自分がいなくなった後。視線がどんどん遠くなる。ぶっちゃけ、いい仕事ほど自分の在任中には実りません。次の人が刈り取る種をまけるか、です。
  • 捨てる。 ここ、超大事。戦略って「何をやるか」より「何をやらないか」なんです。全部に応えてたら組織はパンクする。ちなみに「いつも忙しそうな管理職」って、たいてい“捨てられない・任せられない”の証拠だったりします。耳が痛い。

③ 「命令」じゃ、人は動かない

自分のチームなら、立場でなんとか動いてもらえます。でも上に行くと、権限が効かない相手ばっかりになる。他部門、社外、年上の部下、自分よりエラい役員……。

こういう人たちを動かすのは、命令じゃなくて、日頃ためてきた信頼です。ポイント3つ。

  • 根回しを“段取り”として設計する。 会議の場でいきなりぶつけない。先に主要メンバーと1対1で握っておく。「政治っぽくてイヤだな」と思うかもしれませんが、大きな組織を前に進めるための、れっきとした技術です。正論を一発で通すより、みんなの腹落ちを丁寧に作るほうが、結局は速い。
  • 悪い知らせを“取りに行く”。 これ盲点なんですが、上に行くほど本当のことが耳に入らなくなるんです。悪い報告は角が取れて、遅れて届く。みんな、あなたが聞きたそうなことを言う。だから「悪い報告ありがとう!」と言える人になる。叱ると、真実が来なくなりますからね。
  • 同じことを、しつこく言う。 上の立場になると、あなたの一言は何倍にも増幅されます。だからこそ、大事なことは「言い過ぎかな?」と思うくらい繰り返す。人は7回聞いてやっと「あ、本気なんだ」と気づくものです。

④ 「自分」を、アップデートする

意外と語られないのが、メンタル面です。ここ、けっこう大事。

  • 機嫌は、一定に。 リーダーの不安はチームに伝染します。あなたのイライラ一つで、会議室の空気が凍る。感情を「個人の気分」で処理しちゃいけない。怒りたい時に怒らないのは、ガマンじゃなくて“責任”の一部なんです。
  • 孤独と、つきあう。 上に行くほど、本音を言える相手が減ります。「トップは孤独」ってよく言いますが、あれは比喩じゃなくて構造です。だから社外にこっそり、愚痴れる相手やメンターを持っておく。一人で抱えないでくださいね。
  • 自分の“ものさし”を変える。 「目に見える成果=自分の価値」のままだと、成果が見えない管理職で自分を見失います。ものさしを、「自分が出したもの」から「みんなができるようになったこと」へ架け替える。これができると、急にラクになります。

おまけ:大きい会社は、これが“さらに効く”

大企業だと、上の4つがもっとシビアに効いてきます。

自部門の都合より全社を優先できるか(これができないと役員には届かない)。情熱論じゃなく数字=P&Lで語れるか。終身雇用で育った世代と、転職前提の若手をどう一つにまとめるか。——このへんが、中間管理職以上にはセットでついてきます。覚悟しておきましょう。


で、明日から何をすればいいの?

ここまで読んで「分かったけど、で?」と思いますよね。安心してください、答えはシンプルです。

全部いっぺんにやろうとしない。 まず1個だけ。

いちばん効くのは、①の「手放す」です。なぜなら、ここが詰まってると時間が空かなくて、②も③も④も手をつける余裕すら生まれないから。

なので、明日やることはこれだけ。

自分の“得意な仕事”を、ひとつ手放す。

「これ、自分がやった方が早いんだよな」と思っているその仕事を、あえて誰かに渡す。最初はモヤモヤします。出来も80点かもしれません。でも、それでいい。そこで空いた時間を、「決める」「人」「自分」に使う。これが、転換のスイッチを入れる最初の一歩です。

慣れてきたら、こんな習慣もどうぞ。

  • 3か月に1回、「やめること」を1つ決める(増やすより減らす)
  • 悪い報告を持ってきた人に、まず「ありがとう」
  • 機嫌を一定に保つ(自分の気分は天気予報くらい影響力がある、と思って)

最後に

長くなりましたが、いちばん伝えたいことを一行で。

「自分でやる楽しさ」を、「人ができるようになる楽しさ」に変えられるか。

ここを乗り越えた人から、不思議とポジションは後からついてきます。順番が逆なんですよね。エラくなるから人を育てるんじゃなくて、人を育てられる人がエラくなる。

昇進してモヤモヤしているあなたは、たぶん能力が足りないんじゃありません。ルールが変わったことに、まだ誰も教えてくれてないだけ。

この記事が、その「説明書」になれたらうれしいです。

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